超小型衛星TU BioCUBE — 開発状況 2020春〜夏 [2020/9/19(土)]

超小型衛星TU BIOCUBE — 開発状況 2020春〜夏 [2020/9/19(土)]

[Link: BioCube これまでの活動報告一覧]

東北大の”新領域創成のための挑戦研究Duo (FRiD)” に採択され、2020年頭から本格的な活動を開始した
「Tohoku Univ. Biosatellite Cube “TU BioCube”」(2019〜2023年度) の状況をご報告します。

このプロジェクトは、「超小型CubeSat衛星規格」の汎用Unit(1U)を単位とした、閉鎖系での生命維持が可能な宇宙環境曝露実験ユニットの開発です。国際宇宙ステーション (ISS) のような有人宇宙施設と単独飛翔できる超小型衛星の双方で、「宇宙環境における生命の持続可能性の検証」に向けた新標準インフラを目指しています。

発足報告 (Link) 後、コロナ禍の中でも活動を拡充してきました。
なかなか全体写真も撮れない昨今ですが、一息つけて、ここまでの歩みと今の立ち位置をまとめてみます。

今年度の活動は、JAXA・宇宙科学研究所 (宇宙環境利用専門委・フロントローディング研究) の支援も得て進行中です。
現時点での目標は「地上での実証試験で、本機器の機能・性能を証明すること」ですが、今後の支援拡大によっては、実際のフライトも見えてきます。

[現場チーム] 毎週火のZOOM会議を主軸に、一歩一歩前身中です。常時参加の主要メンバーは以下のとおり。
宇宙開発活動の経験を得ることを希望する院生・学部生のみなさんからもお手伝い頂いています。

* 全体企画 : 桒原 聡文 (工/航空宇宙工 准教授)、小林 稜平 (工/航空宇宙工 M)
* 生命培養 : 日出間 (生命/分子化学生物 准教授)、愿山 郁 (生命/分子化学生物 研究員)
* 構造・機構 : 桒原 聡文 (工/航空宇宙工 准教授)、小林 稜平 (工/航空宇宙工 M)、葛野 諒、中尾 太樹、中村 悠斗, 田中 大河 (工/航空宇宙工 B) および院生・学部生グループ
* 熱 : 桒原 聡文 (工/航空宇宙工 准教授)、渋谷 知正 (工/航空宇宙工 M)
* 電気 : 笠羽 康正 (理/惑星プラズマ・大気研究センター)、永田 和也 (理/地球物理 B)

[春〜夏の諸活動] 宇宙空間に曝露できる小型の閉鎖生命維持システムは、宇宙農業等の技術基盤にもつながりうるものです。とはいえ、先例はなく、当然ハードルは高いものです。今年度は、このハードルを1つ1つ越えていくための作業を進めています。

* 生命培養 (生命科学研究科を中心に)

(1) ISS船内実験 “ゼニゴケ培養システム” を改装した「閉鎖系培養システム」の確立実験を、この4月から追求中です。 小天地での長期生存にはハードルの存在も見えてきていますが、一歩一歩前進しています。ここが最も本質的に難易度が高いところです。

(2) システムに不可欠な「小型培養液供給システム」の検討に、この夏から入りつつあります。打診させていただいた民生機器メーカーに宇宙経験があることを教えて頂くこともあり、日本の宇宙参加実績の深化も目の当たりにしています。

(3) 日本のISS船内生命実験を支えてきた各大学・機関のみなさんと、「初号機およびその後継・発展機」で実施すべき実験とそれらに必要な機能・性能の検討を、この夏から進めつつあります。

* 電気 (理学研究科を中心に)

システム全体および生命維持装置のモニターに、普通の「単機能超小型衛星」では類を見ない数のセンサー群が必要となります。
常に「サイズ・質量の制約下で測るものの種類と質を上げる」戦いの中にいる衛星・探査機群の蓄積を活かし、また資金に乏しい気球・観測ロケット・地上観測での民生機器活用も踏まえ、現実的な設計に押し込みつつあります。
センサー群の検討と試用結果を踏まえて、年度後半には統合制御のための設計深化と試作検討へと向かっていきます。

* 国際宇宙ステーションへの搭載検討

ISSは、「回収が潜在的に可能である」という生命実験にとっては巨大なメリットがあります。
一方で、宇宙飛行士や曝露部に搭載された他機器の安全を保障しつつ、日照・姿勢などの自由度が無いなかで、実験を成立させる必要があり、超小型衛星よりもハードルはむしろ上がる方向です。
国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟への世話役となっているSpaceBD社の皆様と、慎重にこの実現検討を進めています。

[紹介ページ (Duo / FRiD project内)]
「宇宙での生命維持機構の解明に向けた、超小型衛星 Tohoku Univ. Biosatellite Cube (TU BioCube) の開発」
 https://w3.tohoku.ac.jp/frid/project/page-56/