社会インパクト研究「宇宙を拓く」

東北大学は、現代社会の抱える諸問題を解決し、人類が融和的に共存できる心豊かな未来を創造するため、「社会にインパクトある研究」を進めております。
我々は、この活動の中で「F.生命と宇宙が拓く交感する未来へ」(略称:「宇宙を拓く」)を推進しています。

宇宙を拓く グランドデザイン (PDF) 研究実践集 (PDF) 参加研究室・メンバー

地球と太陽系は、その形成から大きな進化と変動を経てきた。惑星環境の脆弱さは、兄弟惑星である金星の灼熱温室や火星の流水痕跡からも明らかである。宇宙から見ると、地球の環境は、我々自身の手によっても今まさに短期間で変貌しつつある。一方、近年、火星には地下水が、木星・土星の氷衛星には地下海の存在が知られるようになった。急激に数を増す系外惑星の中には「第二の地球」も存在しうる。また新たな文明圏の創出を月・火星への国際ミッションも動き出した。生命と文明を育む環境は、もはや地球の占有物ではない。生命と文明を生むに至った地球とそれを抱える太陽系全域の数十億年から秒単位に跨る激動を掌握し、その基礎にたって太陽系を拓き宇宙に拡がる文明を築くことは、広大な宇宙でも希少なこの地球の生命と文明の、宇宙史における存在理由でありまた責務である。

東北大学は、地球と惑星を総合的に捉え惑星・太陽の進化・変動を地球環境変動と統合して解明する「変動地球惑星学」を進めて来た。また、流動ダイナミクス・極限ロボティクスを軸に宇宙航空工学分野で傑出した成果を挙げ、宇宙への容易なアクセスと行動の自由度増大を果たす惑星航空機等の「新ビークル創造」を目指して来た。本プロジェクトは、両者を主軸に太陽系を舞台とする多岐に跨る国際・産学官連携を集積し、宇宙航空関連部局※1の連携によって複数分野に跨るオープンで息の長い活動により、100・1000年先を目指して我々の文明を革新し、良き未来創造の推進力を創出することを目標とする。

本学の強みである、衛星・探査機・独自望遠鏡による地球・太陽系・宇宙の探査、それを自由自在とする宇宙航空工学・ロボティックス・AI・センシング学、地球規模の環境・防災学※2、国際宇宙ステーションでの生命・医学、最先端材料・複雑システム・大規模計算理工学を統合し、太陽系を舞台とする未来構築の設計図を描き出す。今後生まれ出る諸活動や、近隣のJAXA角田宇宙センターとの連携などを含むこれら諸活動を通じて、世界水準の教育・人材育成を図り、我が国を有数の総合大学として、世界と日本の未来創造に貢献する

(※1) 全学的組織「宇宙航空連携研究拠点」の下で、 理学(惑星プラズマ大気研究センター、大気海洋変動観測研究センターを含む)・工学・生命科学・医学・農学・教育学研究科、流体科学・金属材料・電気通信・多元物質研究所、東北アジア研究センターの代表からなるワーキングチームが遂行する。流体科学研、惑星プラズマ大気・大気海洋変動観測両研究センターを中核とし、事務局を理学研究科惑星プラズマ大気研究センターに置く。
(※2) 太陽活動低下による氷河期再来、巨大隕石衝突、太陽巨大爆発による放射線大量飛来等といった学術的な「宇宙規模現象」も想定する。